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大学生のための「思考の種」

「酒を飲まないこと」ムーブメント

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よく寝て、お酒もたばこも飲まない。シンプルで禁欲的な健康法がトレンドだ。

日本人の喫煙率は、平成の30年間で、男性61.1%から27.8%、女性12.7%から8.7%と減少した。禁煙・分煙化が進み、映画やテレビ番組などでの喫煙描写はその必要性が厳しく問われる。たばこ税が増税されたばこが高級品になった。喫煙の健康リスクが周知され、「吸わない」姿勢がクールだという社会的なトレンドが生まれた。

日本人の飲酒習慣はどうだろう。平成の30年間で酒類の販売量は「微減」。だが20代から30代で週3回以上飲酒する習慣のある人の割合は大きく増加している。特に若い女性が以前より飲酒するようになっている。

飲酒にも大きな健康リスクがある。肝臓病、心臓病、コレステロール値の増加、中毒や自殺・うつ。WHOの評価ではアルコールは癌の原因になるとされている。それにアルコールは飲む人の体質を問う。飲みの席で「飲まない」ことで後ろめたさや疎外感を感じる人もいる。「飲む人」の輪は排他的で、ダサい。お酒を場の潤滑剤とした「飲みにケーション」では、ついつい本音や乱暴な言葉が飛び出したりして、生産的な議論は期待できないし、結局翌朝には話の内容を忘れていたりする。シラフでいる方がよっぽどましではないか

海外では、飲酒を問題視する人々が声を上げる。「#soberissexy」で検索すると、アルコールなしでも人生を謳歌できる、という投稿が並ぶ。「飲まないこと」は健康法のひとつであり、わたしのライフスタイルを規定する、アイデンティティなのだ。

時事芸人のプチ鹿島は、「寝ない自慢はもう古い。これからは「寝れる自慢」だ」と言った。忙しくて4時間しか寝れてない、などとわざわざ口に出すのはどこかそれにかっこいい響きがあったからだろう。しかしこれからは、寝る、睡眠をしっかりとる、こともひとつのアイデンティティになってくる。忙しい日常で時間を作って睡眠をしっかりとれる人は、時間管理能力に長けているし、起きているときのパフォーマンスも高いはずで、それは確かにかっこいいだろう。

 

courrier.jp

The New York Timesが、アメリカで起こる「飲まないこと」ムーブメントを記事にしている。

記事に登場するのは、43歳の記者、32歳の元ブランドコンサルタント、34歳のアーユルヴェーダ(インドの伝統医学)学者など、現役の社会人、ビジネスマンたちだ。20歳になったばかりのZ世代は、まだお酒への興味が強く、飲むことへのあこがれを持ち続けているだろう。ただしお酒に弱くそれで飲みの場を楽しめない人には、この「飲まないこと」ムーブメントを知ってほしい。もちろん、飲むことを楽しんでいる学生にも、自身の健康問題として考えてほしい。